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「英国一家、日本を食べる」マイケル・ブース/著

英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

英国人一家が初めて日本を訪れ、長期滞在をして日本各地で様々な料理を食べるというエッセイ。
6歳と4歳の子供たちはポケモン、奥さんは買い物、本人はとにかく食べることを目的に来日しているのですが、北は北海道から南は沖縄まで、本当に各地を食べ歩いています。
数ヶ月にわたって日本に滞在するため、長期滞在型のマンションであったり、京都では町屋で暮らしてみたりはしているのですが、基本的には外食の話。
主に高級料理を食べている印象があるのですが、北海道ではラーメン横丁に行ったりカニを食べたりしているものの、子供たちは新幹線に興味を持たず、またお好み焼きにも箸が動かないというマイケル氏の期待に沿った反応がなかったところも楽しめました。
子供って正直だから。
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「僕は奇跡しか起こせない」田丸久深/著

僕は奇跡しか起こせない (宝島社文庫 『日本ラブストーリー』大賞シリーズ)

10歳で突然亡くなった幼馴染み真広を25歳になっても忘れられない紗絵。
高校で臨時の養護教諭として働く彼女の前には、同じ年齢まで成長した姿の真広が「奇跡を起こす存在」である「キセキ」として雨の日だけ現れる…。

雨の日にだけ現れる「キセキ」の真広と、養護教諭である紗絵の、お互い好きなのだけれども未来が交わることのない切ない物語でした。
なにを言ってもどうにもならないもどかしさのようなものが物語の中にあるのですが、最後まで楽しめました。
人が死ぬ話よりも、人が死んだ後の話の方が悲しさが増すような気がします。
残された人と、残して逝ってしまった人の双方が、いろんなものを抱えて、それでも明日という方向を向いて進んで行くしかないような感じです。
奇跡が必ず人を幸せにするとは限らないのですが、それでも奇跡が起きたから「いま」があるのだと言えるように思えました。

「思い出のとき修理します 3 空からの時報」谷瑞恵/著

思い出のとき修理します 3 空からの時報 (集英社文庫)
シリーズ3作目は家族の物語でした。
短編4作品が収録されていますが、今回は明里と秀司の家族に対する考え方であったり、商店街の人々の家族模様がこれまでよりも色濃く出てきたような気がします。
明里の義父や実父の話であったり、明里が忘れていたような思い出であったり。
恋愛であればふたりで成立する関係も、そこから発展するとなると双方の家族が絡んでくる問題なので、明里が頭を悩ませたりしていましたが、家族に対する意識というのは千差万別な気がします。
4作品の中で一番好みだったのは「星を探す人」。
懐中時計の話ですが、色んな誤解がありつつも、時が解決してくれるという流れになるといいのに、と感じる話でした。
物語としては、明里と秀司の恋愛がただ恋愛だけで終わらずに進むことを期待します。

「公主様のお約束! それはうっかり出逢うこと」我鳥彩子/著

公主様のお約束! それはうっかり出逢うこと (コバルト文庫 わ 5-26)

「贅沢な身の上」の次世代編で、ヒロインは主人公になりたくないお姫様の花梨。
うっかり後宮に入って皇后にまでなってしまった母親と違い、自分はヒロインにはならず二十巻ルールを遵守するのだと息巻いて結婚をいやがっている17歳です。
花蓮とは異なり、お姫様として生まれ、母親によってときめき英才教育を受けて育っただけあって、なかなかの自由人でした。
家出をしたり、それでも趣味道は邁進し、景遥では自由気ままにお忍びで遊び回っていたりするのですが、母親ほど自由に過ごせていないところで気苦労があったりするようです。
両親に溺愛されており、心配性な弟が常に探しにきてくれたりと、羨ましい限りですが、さらには家出先でうっかり美女を拾ってしまった挙げ句にそれが婚約者だったという辺りはしっかり母親の気質が遺伝していたりします。
「贅沢な身の上」よりもファンタジー色が濃くなってはきているのですが、ヒーローであるはずの楽耀が昼間は美女なので、いっそのことそのまま美女であってもいいんじゃないかとちょっと考えてしまったりもします。その方が花梨には気に入られるのでは…。
皇太子の天遊は、彼なりに父親に対して競争心を持っているようですが、やればなんでもできる子なので、本当に天綸の分身のような子です。
本当に花蓮の子供なのかどうかが謎なくらい、スキルが高いです。
ただし、それがほぼ皇太子としての立場に関係ないところで発揮されていますが。
花蓮や天綸は相変わらずな感じでしたが、二人で護衛なしに景遥をうろついていても皆が慣れっこになっているんじゃないかという気がしてきました。
後宮も平和そうですし。
王太后は隠居したのかどうかが気になるところです。
宰相家もどんな感じなのやら。鳴鳴は立派に奥様をしているようですが、息子が亀を可愛がっているのをどう思っているのでしょうか。亀ごときでは動じないでしょうけれど。
天遊のふたりの弟がまだ登場していないので、今度どのように登場するのかも気になるところです。
物語としては、雑誌掲載時の内容が文庫1冊分に増量された状態ではありますが、新キャラが登場したり、まだまだ次に続くような気配が濃厚なので、続刊が出ることを楽しみにしています。

「村岡花子エッセイ集 腹心の友たちへ」村岡花子/著

村岡花子エッセイ集 腹心の友たちへ

村岡花子さんのエッセイを集めたもの。
戦中、戦後に書かれたものが収録されています。
女学校時代の話もありましたが、東洋英和女学校を卒業しても日本の教員免許は取得できなかったとか、そのために山梨の系列の学校で教員をしていた話などもあり、興味深かったです。
当時は日本の教育機関としては認められていなかったということですが、それでも当時の日本の女学校の中では英語教育のレベルは高かったと思われます。
ドラマ「花子とアン」では、「赤毛のアン」を出版するまでの物語という流れでしたが、その後、夫を亡くした後にどのようなことを考えて生きていたか、や、孫との関わりなども書いてある一文があり、本人の文章に勝るものはないと感じました。
「ラジオのおばさん」として名が知られるようになり、ときには声帯模写で物まねをされたりすることの気恥ずかしさや、講演会で全国各地を飛び回っている多忙な日々。
その中でも、村岡さんが徳島に講演に来たことがあるというのも、ちょっと驚きでした。
本当に招かれれば日本各地を回っていたんですね。
雑誌などに掲載されるエッセイということもあり、戦中であっても日常のあたりさわりのない内容になったりしていますが、そういうところも含めて、著者の姿勢のようなものが感じられました。

「みちくさの名前。 雑草図鑑」吉本由美/著

みちくさの名前。―雑草図鑑

著者があちらこちらの道端を歩いて、その道端に生えている草花の名前や由来を専門家から聞くという散歩企画の本。
本当に普通にあちらこちらに生えている雑草の名前が紹介されていて、「あれってこういう名前だったのか!」とよく見かけるけれど名前は初めて知ったという草花がたくさん登場していました。
その中でも、全部タンポポだと思っていたら実はタンポポではなかった花とか、同じ種類だと思っていたら別の種類だったとか、個性的な名前を持つ草花がたくさん登場していて楽しめました。
散歩をしていた場所は関東が中心ですが、全国各地どこにでも生えている草花ばかりが紹介されています。
外来種もたくさんあるけれど、日本古来からある種類の草花もたくさんあり、雑草と一口に言っても様々だと知りました。
また、かつては薬草として使われていたものや、毒があるものもたくさんあるんだな、と。
「ケサランパサラン」の正体なども「ほーっ」という感じの内容でした。
普段はあまり道端の草花には目をくれず、どうしても木々の花々に目をやりがちですが、足下にも目を向けて歩こうと思わせてくれる一冊です。
どこそこに行かなければ見られない草花、というのでないのがポイント。
高山植物のような高嶺の花ではありません。
十把一絡げどころか、常に庭の大敵として筆者でさえ引っこ抜いているような草花がたくさん登場します。
庭師の敵のようなものでしょうか。
安易に自分の庭に持ち込んではいけないものがたくさんあるものなのですね。
八ヶ岳も行ってみたくなりました。
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